食としつらい、ときどき茶の湯

ふつうの暮らしをちょっとよく。背伸びしないで今日からできる、美味しくて心地よい暮らしのヒントを集めています。

家をつくろうとする方・つくられた方の傍で、 家 人 暮らしを永年見守り続けた 元・建築設計事務所 広報担当から
日々の暮らしを見つめるヒントをお届け。家の捉え方、 暮らしの向き合い方を見つけるきっかけになれば嬉しいです。

ことばと器

今日、ちょっと嬉しいことがあった。 何気ない仕事のメールのやり取りでお返事をくださった方が、「ことば選びが美しいからメールをいただくと嬉しくなる」と書き添えてくださったのだ。ちょっと書き添えてあっただけだけど、大いなるお世辞や気遣いかもしれ…

70歳のお雛さま

3月の終わり、母の古希の誕生日。家族で祝おうと実家に行くと、ピアノの上に古いお雛さまとお内裏さまが飾られていた。ここ信州では、お節句を月遅れで祝う風習があり、ひな祭りは3月3日ではなく4月3日。“ひな祭り本番”を間近に控え、せっかくだからと小屋裏…

美味しい蕎麦のはなし

長野県の麻績村に、自分で蕎麦を育て、挽いて、打ったものを売ってくれる方がいる。 仕事で初めてそのお宅を訪ねたとき、打ち合わせ終わりに「食べてみて」といただいたのが出会い。全てひとりでやっているというお父さんが、「いいかい、とにかく"茹で"が肝…

おもてなし その裏側を知る

「お茶事」は、誰もがよく知る"抹茶とお菓子"だけでなく、食事を伴うおもてなし。 本来、茶道はこの一連のおもてなしを通じて客人と亭主が心通うひと時を楽しむのもので、もてなす側・もてなされる側も、五感をフルにつかって全神経をこのひと時に傾ける。 …

空間をガラリと変える ファブリックパネル

勤めていた設計事務所では、性能の高さやデザイン性などから北欧スウェーデンの住宅を研究していた。建築はもちろん、インテリアや家具、文化、ライフスタイルなど北欧の情報に触れる機会が多く、私自身、気がつけば 北欧テイストが体になじみ、和と北欧が融…

サンタの煙突

12月25日。 夜中じゅう駆け回り 子どもたちにプレゼントを届けたサンタクロース、今はほっと一息ついているはず。お疲れさま、サンタさん。 サンタさんとの出会い 初めてサンタクロースを知ったのは、4歳の頃。幼稚園で 絵本を読んでもらったときだった。初…

まめまめしくハタラク。父の畑と落花生。

今年も 父の自家製落花生の美味しい季節がやってきた。実際、父のつくる落花生は家庭菜園の域をはるかに超える。ぷっくりしていて 硬すぎず、乾きすぎず。よく見る国産品より大ぶりで、中国産よりジューシーだ。カリッと噛んだ時の食感と、顔のまわりに広が…

母のお弁当三原則

母のお弁当 高校生になってお弁当を持っていくようになると、母は 父のお弁当に加えて私のお弁当もつくってくれるようになった。前にも書いたが、母は「盛り」にうるさい。決して豪華でも 特別手が込んでいるわけでもない 普通のお弁当だが、娘から見ても母…

キキの街、ドゥブロブニク

キキの街 宮崎駿監督のジブリ映画、「魔女の宅急便」が好きな女子は多い。私もその一人。13歳で一人立ちしたキキが辿り着いたのは 海のそばの小さな街。喜んだり塞ぎ込んだり この年頃ならではの描写に 自分を重ねた人も多いのでは。みんなこんな甘酸っぱい…

野菜はアタマからシッポまで

野菜を切ったら出てくる 皮やヘタ。捨ててしまわず 冷凍してストックし、色々な素材が集まるとできてしまうのが、野菜だしのスープ。 野菜だしのスープは、ふわっとやさしい風味がする。もちろん、使う野菜によって色も香りも全然違うのだけれど、そこがまた…

キセキのみかん

「愛媛からミカンです、重いですよ」と聞いた瞬間、「あ!」と、一人の顔が思い浮かんだ。荷物の伝票を確認すると、やはり、あのお父さん。宇和島の、あのお父さん。 宇和島へ 今年7月、西日本を襲った集中豪雨。ニュースを見ると、山があちこちで崩落し、…

食で季節をつかまえる 松茸ごはん

夕方、突然母がやってきて「これ、おすそ分け」と持ってきてくれたのが松茸。父が友人からいただいたらしい。高級食材を食べ慣れているわけじゃないから その良さやうんちくみたいなものは正直よくわからないけれど、食を通じて四季を堪能できるのは心のそこ…

暮らしのなかの日々の花「センニチコウ」

センニチコウ。夏から秋にかけて、長い間咲き続けることから「千日香」と名付けられたそう。センニチソウともいうらしい。 花のある暮らし このお花、設計事務所時代から慣れ親しんだものの一つ。完成したばかりの殺風景な家に人さまをお迎えしたいとき、所…

朝が始まる前に 〜バラガンの朝食室に思う〜

朝が始まる前 近ごろ ずいぶん日の出が遅くなった。 夏至前後 2-3ヶ月の日の出は4時台。薄暗いうちから飛び起きて 日の出15分前のピンクの空を眺めて帰ってきても、あたりはまだ静まりかえっている。世の中が動き出すまでのひと時、本を読んだり書きものをし…

脱・モノの多い暮らし

ずいぶん前から、所有するモノの量を考えるようになった。服も ストック品も 極力買い集めないようにしている。改めて モノの量のことを考えていたら、昔書いた記事をふと思い出した。2016 年に書いた今はなきブログ記事、思い出しついでに ここに移し書いて…

感覚のリセット

茶道を習い始めて十数年。仕事帰りに 意識朦朧 ヘロヘロ状態で先生のお宅にたどり着き、「今週もどうにか ここへ来た」という妙な達成感をもってお稽古に望む日々。身支度を整え しっかりお茶と向き合う用意をしていくべきところ、ただただ半身でお稽古場に…

ときめき!!『ラブおばさんの子供料理教室』

今でも大事に持っている、子どもの頃に買ってもらったある本のお話。 おもちゃ屋さんには近寄らないけれど、本屋さんにはよく連れて行ってくれた母。「一冊だけね」という声を合図に好きな本が並ぶエリアに急行するのが常。ただし その『一冊』にはマンガは…

ほろ苦コーヒー まろやかコーヒー

むかしから、毎朝必ずコーヒーを淹れる。漂う香りがなんともいえない。ちょっとでも時間があれば豆からガリガリ。挽き立ては、ミル済コーヒーの数倍香りが良くて幸せ度が違う。ところが最近、そんな香りを楽しむ朝のルーティーンに衝撃が走った。 『コーヒー…

茶碗の中のご飯の美学

母は食事の盛り付けに少しうるさい。 「美味しそうに盛る」 これが口癖で、子どもでも ごはんの盛り方がきれいじゃないと容赦なくやり直し指令をだしてくる。 「美味しそうに盛りなさい」 父のごはんは やや大ぶりのお茶碗にたっぷり盛り。一膳めは、お茶碗…

日の出15分前のキセキ

毎朝、世の中が始まる前に公園を散歩する。眠れないまま朝4時を迎えた6月の終わり。何気なくカーテンの裾から窓の外を見てみると、空が この世のものとは思えないほど美しいピンク色に染まっていた。衝撃。こんな素敵な時間があったことを知らずにうん十年…

素敵な家に 素敵な暮らしが付いてくるわけじゃない

竣工したての現場にて。建物はもちろん外構など敷地全体が調い、醸し出す雰囲気も素敵。お施主さまがお住まいになるまであとわずか。 長年、設計事務所で 沢山のお客さまに接してきて思うのは、どんな方もその後の すてきな暮らしを思い描いて家をつくるとい…

おばあちゃんの誕生日に。

おばあちゃん94歳のお誕生日。 これまで仕事ばかりで顔を出すこともままならなかったことを猛省し、茶懐石の点心風お昼を用意して会いに行ってきた。 近頃 外食がむずかしくなってきたので ちょっとでも特別感を味わえたらというこちらの気持ちが読めたの…

インスリノーマ "100万分の1"のあなたに届ける私の記録 5

【専門医診察】病気の概要 病院へ 2016年7月19日預かった紹介状を持ち、夫と二人で 別の総合病院の「糖尿病・内分泌内科」へ。先生は、30代前半の女医先生。 「血糖値が低いようですね。今は大丈夫ですか、フラフラしませんか?」と先生。低血糖とわかってか…

インスリノーマ "100万分の1"のあなたに届ける私の記録 4

【診察開始】 初めての診察 受診した病院は、何年も健康診断を受け続けている 前述の総合病院。あの問診の医師が担当だったらどうしようとも思ったが、健診と診察は別と信じ、過去の健診データを持つこの病院に行こうと決めた。 2016年7月13日夫婦共に休日だ…

インスリノーマ "100万分の1"のあなたに届ける私の記録 3

【病院に行くまで】診療科をなやむ 健康診断 2014年10月、健康診断の問診で しびれについて話してみた。しびれを感じるようになってから もうだいぶ経ってのことだ。ところが 問診医は「そうですか」と問診欄に『しびれ』と書くだけ。なんだ やっぱり気にす…

インスリノーマ "100万分の1"のあなたに届ける私の記録 2

【病院に行くまで】さまざまな症状 しびれ 最初に症状が始まったのは、2-3年前。気づくと 17時ごろ 口元がビリビリするようになっていた。舌先がビリビリすることもある。「疲れかな」と、PCに向かいながら チョコレートをつまみコーヒーを飲んでいるうち…

インスリノーマ "100万分の1"のあなたに届ける私の記録1

書くことにします 「インスリノーマです」と女医先生。 数ヶ月に渡り、「インスリノーマかも」と言われながら複数の病院を渡ってたくさん検査をし、その結果を聞く日。ようやく病名が確定したことで少し安堵の気持ちが湧いた。 まだ他にも原因を探る必要性も…