食としつらい、ときどき茶の湯

ふつうの暮らしをちょっとよく。背伸びしないで今日からできる、美味しくて心地よい暮らしのヒントを集めています。

家をつくろうとする方・つくられた方の傍で、 家 人 暮らしを永年見守り続けた 元・建築設計事務所 広報担当から
日々の暮らしを見つめるヒントをお届け。家の捉え方、 暮らしの向き合い方を見つけるきっかけになれば嬉しいです。

脱・モノの多い暮らし

ずいぶん前から、所有するモノの量を考えるようになった。服も ストック品も 極力買い集めないようにしている。改めて モノの量のことを考えていたら、昔書いた記事をふと思い出した。2016 年に書いた今はなきブログ記事、思い出しついでに ここに移し書いておこう。

 

家が持つ 荷物の量を考える 〜2冊の本の視点から〜 

『フランス人は10着しか服を持たない』という本が売れています。パリにホームステイ経験のあるアメリカ人、ジェニファー・L・スコット氏による著書です。

「10着なんて絶対嘘だ!」という声が聞こえてきそうですが、これは、季節ごとに着回すワードローブ数なのだそう。それでもやはり、「全く想像できない」と感じる方が大半かもしれません。

荷物に関する書籍でもう1冊。
世界の家と家財道具と家族を撮った面白い本があります。およそ20年前に出版された、写真家のピーター・メンツェル氏著、『地球家族 ー 世界30か国のふつうの暮らし』

各国のお宅の写真を見比べると、日本の家の家財の多さに驚いたり、「ウチはこんなもんじゃない、もっとあるよ」という方もいらっしゃるかもしれません。

一般に、私たち日本人は服に限らずとにかく荷物が多い。「勿体ない」という感覚や風習がある上に、「いつか役に立つかも…」という淡い期待の入り混じった「判断保留」が多いのも事実。”何十年モノの開かずのハコ”をいくつも押入れに入れたままの方も多いのではないでしょうか。

家族構成や年代によって適した大きさ・環境の家に住み替える文化の西欧と違い、日本人は ひとつの土地で土着して生涯を送ることが多い。家を幾世代も住み継ぐこともまた文化です。

となれば、判断しない限りは「保留」は増える一方で、「中身はよく分からないが 何か大事なモノ」が何十年もそのまま家にあることになります。新しく家をつくろうというときも、女性の方の多くが「先ず収納」とおっしゃいます。もちろん十分あるに越したことはないのですが、収納をつくるのだってリビングや寝室同様、”スペース”と”お金”がかかります。

「よくわからない何か大事なモノ」 「ほぼ出番のないモノ」を置くために、何十万、何百万もお金を払い、ときには家族の“居場所”を圧迫しているのです。“ぜひそばに置いておきたい大切なもの”を見極めて、それらを厳選できる感覚をもう少し持てたなら、モノを持つ豊かさとは違う豊かさに出会えるかもしれません。

そして、家はもう少し小さくていいかもしれません。機会があったら この2冊の本を手にとってみてください。

『フランス人は10着しか服を持たない ~パリで学んだ“暮らしの質"を高める秘訣~
著者:ジェニファー・L・スコット / 翻訳:神崎朗子 / 出版:大和書房

『地球家族 世界30か国のふつうのくらし』
著者:ピーター・メンツェル、マテリアルワールドプロジェクト / 翻訳:近藤真理、杉山良男 / 出版:TOTO出版