食としつらい、ときどき茶の湯

ふつうの暮らしをちょっとよく。背伸びしないで今日からできる、美味しくて心地よい暮らしのヒントを集めています。

家をつくろうとする方・つくられた方の傍で、 家 人 暮らしを永年見守り続けた 元・建築設計事務所 広報担当から
日々の暮らしを見つめるヒントをお届け。家の捉え方、 暮らしの向き合い方を見つけるきっかけになれば嬉しいです。

感覚のリセット

茶道を習い始めて十数年。仕事帰りに 意識朦朧 ヘロヘロ状態で先生のお宅にたどり着き、「今週もどうにか ここへ来た」という妙な達成感をもってお稽古に望む日々。身支度を整え しっかりお茶と向き合う用意をしていくべきところ、ただただ半身でお稽古場に顔を出す状態。失礼な話だ。それでも、どうしてお稽古に行くのか。
それは、心のコンディションが見えるから。ズレたものを正すことができるから。

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茶道では、所作一つひとつに集中し、丁寧でゆったりとしたリズムが求められる。効率やスピード、成果を求める 自分の日常世界とはまるで真逆。普段なら通り過ぎてしまうような小さな事象、モノ・コトに意識を向け、心を傍に寄せていく。

不思議なことに、お点前には私の精神状態がよく表れる。仕事で難しい案件に携わっている時、大量の業務を抱えている時、大きなイベントを前にしている時などは、決まって先生に「今日はなんだかひどいわね」と言われてしまう。当たり前のことを忘れたり間違えたり、一つひとつの所作にせかせかしたり。自分では集中しているつもりでも、いつも見ている先生からするとわかりやすく「ひどい」のだ。
先生の「ひどい」の一言は、私の仕事アタマの強制終了ボタンになる。はっと気づかされるようで、そこからようやく所作一つひとつに意識が向く。ゆっくり丁寧にと意識するうち、頭の中の大半を占めていた不安感やストレスは おのずと姿を消していく。

ちいさなことに目を向ける余裕なく、広く浅くモノを見て効率と成果を求める日常。このままでは大事なことを見失いそう、と気付きながらもコントロールできない時、茶道にただただ身を委ねることで 私はこの世界に戻ってこれているようだ。