食としつらい、ときどき茶の湯

ふつうの暮らしをちょっとよく。背伸びしないで今日からできる、美味しくて心地よい暮らしのヒントを集めています。

家をつくろうとする方・つくられた方の傍で、 家 人 暮らしを永年見守り続けた 元・建築設計事務所 広報担当から
日々の暮らしを見つめるヒントをお届け。家の捉え方、 暮らしの向き合い方を見つけるきっかけになれば嬉しいです。

インスリノーマ "100万分の1"のあなたに届ける私の記録 4

【診察開始】

初めての診察

受診した病院は、何年も健康診断を受け続けている 前述の総合病院。あの問診の医師が担当だったらどうしようとも思ったが、健診と診察は別と信じ、過去の健診データを持つこの病院に行こうと決めた。

2016年7月13日
夫婦共に休日だったので 夫にも付き合ってもらうことに。サラダとパン、ベーコンエッグを食べ、コーヒーで一息ついてから 病院へ。窓口で「何科に行けばいいですか?」と聞くと「とりあえず内科」と言われ、従う。
この病院では、事前に看護師さんの問診を受ける。しびれが頻発すること、時々意識が遠のくこと、食べれば回復している気がすること、健診でしびれを訴えたけどスルーだったこと、健診結果に「低血糖の疑い」とあること、自分ではその症状が当てはまる気がすること などを伝えた。ふむふむと よく話を聞いてくれる看護師さんに メモしていた近頃の症状と 思いの丈、ついでに健診の愚痴を話したら とてもスッキリした。医師を前にしたらここまで話せないかもしれない。その場で採血し、診察室に呼ばれるのを待った。

診察室に入ると、40代の医師が待っていた。よかった、健診とは違う先生だ。事前申告の症状をひと通り確認すると、PC画面に映し出された健診データを見ながら「うちの病院でしたか、申し訳なかったですね」と先生。それだけで 救われた気分だ。「血液検査結果を待つ間に、造影剤のMRIも撮ってきてもらっていいですか」そう言われ、夫を待合に残し、1人撮影室に向かった。

この頃、実は しびれや意識が遠のくことは日常茶飯事になっていて、「明らかな異常」を自覚していた。ネットで調べて以来 常時飴をなめていたが、この日は診察だからと飴を控え、持っていなかった。MRIの部屋に入った頃には すでに症状が始まっていて、まずいかもと思ったが「ここは病院だから大丈夫」と言い聞かせ、寝台に横たわる。ヘッドホンをし、ものすごい振動を感じながらドームの中に入っていく。造影剤を投与された。体の中を熱い液体が走るのを感じて動揺する。次第に何が何だかわからなくなり、気が狂いそうになる。心臓がバクバクする。意識が遠くなっていく。このまま死んだらどうしよう。…40分後、ほとんど気絶したような状態で検査を終えた。検査室を出て廊下の手すりにつかまっていたところ、さっきの看護師さんが走ってきた。「大丈夫ですか、探していたんです!血糖値がものすごく低くて、先生が 危ないからすぐに糖を摂取させるようにっておっしゃるけど どこにいるかわからなくて!」と抱きかかえられた。内心、MRI撮ってこいって言ったじゃん…と思ったが、同時に助かった、とも思った。時間は11時半。朝食からわずか3時間だか、もうそれほどまでに 持ち時間が短くなっていたのだ。普段 どれだけ飴に助けられていたのだろうか。

 

採血結果

看護師さんに抱えられながら、夫の待つ待合へ。夫は何事かと驚いていたが 普段ここまでの症状を見たことがないから、検査で何かあったのかと思ったようだった。看護師さんに「ダンナさん、すぐに飲むものか食べるもの 何か買ってきてください!」と促され、夫は訳が分からず売店に走って 微糖のミルクコーヒーを買ってきた。び、微糖…と思ったけれど、夫は何も知らない。微糖でも無糖よりは断然いい。少し回復した頃、再び診察室に呼ばれた。

「朝 食べたんですよね?10時すぎに採血してこれしかないなんて。いまは大丈夫ですか?!」と先生。先生の手元の検査結果表には、「インスリン 3.1μU/ml」「血糖 47mg/dl」と書かれた欄にボールペンで赤い線が引かれ、脇に 「3.1x6/47/18 = 18.6/2-6 = 7.15」と走り書きされていた。「低いって事ですか?」と夫。「低いですよ、朝 食べたのにそんなだなんて」と被せ気味に看護師さんが答えた。先生と看護師さんの急き立てるような話しぶりに、結構よくない状態なんだな、と自覚した。

「インスリノーマの可能性があります。いいですか、これから紹介状を書きます。専門の先生のいる病院に行ってください。多分入院して検査することになると思います。」

低血糖という言葉を頼りに 薬か何かをもらうつもりで来たはずが、予想外の展開。隣で聞いている"寝耳に水"の夫はもっと衝撃を受けただろう。帰りがけ、更に「今日のお会計は17,520円です」と言われ 目が飛び出そうになりながら 病院を後にした。
帰り道、夫に「いろいろ ごめん」と言いながら帰った。症状を共有していなかったこと、どうも大事になってしまいそうなこと、いろいろな意味を含んで謝った。夫は、「まぁいいさ、言われる通り 専門の先生のところに行くしかないさ」といい、ここから2人で「インスリノーマってなに?」と調べる毎日が始まった。