食としつらい、ときどき茶の湯

ふつうの暮らしをちょっとよく。背伸びしないで今日からできる、美味しくて心地よい暮らしのヒントを集めています。

家をつくろうとする方・つくられた方の傍で、 家 人 暮らしを永年見守り続けた 元・建築設計事務所 広報担当から
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インスリノーマ "100万分の1"のあなたに届ける私の記録 5

【専門医診察】病気の概要

病院へ

2016年7月19日
預かった紹介状を持ち、夫と二人で 別の総合病院の「糖尿病・内分泌内科」へ。先生は、30代前半の女医先生。

「血糖値が低いようですね。今は大丈夫ですか、フラフラしませんか?」と先生。低血糖とわかってから、どの病院でも待合にいるだけで 看護師さんに「大丈夫?」と声をかけられる。普段 このまま生活してきたので 大丈夫?と聞かれることが新鮮で、どの時点で「大丈夫じゃない」と言っていいのか分からないな、と思ったりする。

先生の質問に「大丈夫です」と答えると、「インスリノーマの疑いがあるということなんですね」と話は続く。「ネットで調べたりされました?」と先生。おお、ネットで調べてる前提で話すなんて 今ドキと驚きつつ、「はい、でもあんまり見つけられなくて」と答えた。実際、論文や臨床結果を見かけるぐらいで あとはフェレットの話が多い。

 

インスリノーマって

「インスリノーマって100万人に一人とか二人とか、非常に少ないんです」そう言われ、一瞬 固まった。先生の話によると、本来 ホルモンからの指令を受けて膵臓インスリンを分泌し、血糖値がコントロールされているという。ところがインスリノーマになると 指令が無視され、インスリンが過剰分泌される。原因は小さな腫瘍。小さいくせにインスリンを分泌する機能を持ち、指令を無視してインスリンを出しまくる。つまり、身勝手な行動をする小さいやつが膵臓にくっついているというのだ。

先生は 絵を描きながら 膵臓インスリンの関係、インスリンと血糖値の関係、インスリン分泌の指示命令系統の仕組み、脳の働きに血糖は欠かせないこと、血糖値ごとの体への影響・反応など、時間をかけてじっくり説明をしてくれた。こちらはすっかり『膵臓ツウ』になった気分。話を聞いている分には、ほほう という感じだが、自分事としては捉えられない。心臓や胃や腸と違って"在る"ことすら自覚できない臓器のはなしは なかなかピンとこない。

 

手術すれば治る。けども。

インスリノーマは、腫瘍を摘出すれば治るという。摘出すれば、ということは手術をするということだ。そこに気を取られていたが 話は進む。「特定するまでが大変なんです。腫瘍が小さくて 画像ではわからないので、いろいろな検査の数値を見て特定し、それから腫瘍を探すようになります。探すと言っても簡単ではないんですけどね。検査には大人数が必要なので、そうなったら 大学病院で検査することになります。」前述の"摘出"に気を取られていたけれど、"大人数"と"大学病院"にインパクトがありすぎて気が遠くなる。ますます他人事に思えてならなかった。

「 今の時点では、インスリノーマの可能性が高いというだけで断定ではありません。指揮命令系統の異常ということもありえますし、他の可能性もありますからね。まずは、インスリノーマを疑いながら 多角的に見ていきます。検査には体への負担や危険も伴いますので病院に入院していただいて検査するようになります。」

もう誰の話かすっかりわからなくなって ぽわんとした気分で聞いていたら、隣にいた夫が「わかりました。宜しくお願いします。」と答えた。そうだ、私だ。

 

 注意事項

「とりあえずは、低血糖発作が起きないよう 常にブドウ糖を持ち歩くようにしてください。おかしいな、と思ったらすぐに摂取する癖をつけてください。運転中に突然意識を失う事だってありますからね。困ることや不安があれば、いつでも連絡ください。」

そう、とりあえず1ヶ月後の検査入院まで 低血糖症状を起こさないよう対策しなくてはいけない。看護師さんから、病院の売店ブドウ糖を売っていると教えられ、売店で小包装になった砂糖の塊のようなものを買い、入院手続きの説明を受けてから病院を後にした。

帰りみち、ドラッグストアでも「ブドウ糖」を見つけ買い足したが、「これって つまり砂糖だな」と思い、種類を変えて気分を紛らわすため 黒糖も買った。手術がどうの、検査がどうの の話はうっすら忘れ、頭の中は『糖を切らさない!』という使命でいっぱいだ。