食としつらい、ときどき茶の湯

ふつうの暮らしをちょっとよく。背伸びしないで今日からできる、美味しくて心地よい暮らしのヒントを集めています。

家をつくろうとする方・つくられた方の傍で、 家 人 暮らしを永年見守り続けた 元・建築設計事務所 広報担当から
日々の暮らしを見つめるヒントをお届け。家の捉え方、 暮らしの向き合い方を見つけるきっかけになれば嬉しいです。

インスリノーマ "100万分の1"のあなたに届ける私の記録 2

【病院に行くまで】さまざまな症状

しびれ

最初に症状が始まったのは、2-3年前。気づくと 17時ごろ 口元がビリビリするようになっていた。舌先がビリビリすることもある。「疲れかな」と、PCに向かいながら チョコレートをつまみコーヒーを飲んでいるうちにしびれは消える。

あるとき お風呂に入ると決まって両手の指先がしびれていることに気づいた。考えてみれば かなり前からだ。まるでお尻の下に手をおいて長い間座っていたよう。口元や舌先、足裏がしびれることもある。もやもやしながら お風呂からあがり、遅い夕食の支度を始める。

食事のときに夫に話そうと思うのだが、味見やつまみ食いをしながら支度をしていると 知らないうちにしびれは消え、話そうと思っていたことすら忘れてしまう。次第にほぼ毎日表れる症状が当たり前になり、慣れていった。

日々同じようなリズムで過ごしていれば、しびれる時間は決まってくる。ただ、身体的負荷が大きいこと・頭を使うこと・神経を使うことが重なれば、いつもとは違うタイミングでしびれることもある。パターンが読めないうえ 知らない間に消えているので しびれを意識しにくいという厄介さもある。
私の場合、「間食は体型維持の敵!」と極力間食を避けていたのが 頻繁に症状を引き起こした原因かもしれない。ただ、間食が少ないから症状が現れやすく、見つかりやすかった、とも言えるかも。

 

頭痛

しびれが出た時、ついでのように現れるのが頭痛。頭痛薬の残り香が苦手で 頭痛薬は滅多にのまない。肩を揉む(凝っているせいかもしれないから)、頭を揉む(少しラクになる)、後頭部をパンパン叩く(見ている人はコワイらしいが 本人的にはラクになる)という対処法で過ごしていたが、いつからか チョコを食べるとラクになることに気づく。「ムズカシイ話をするときは、甘いもの食べて血糖値を上げないと集中力が途切れるよ」と誰かが言っていたことから、『ムズカシイ話をする→頭が痛くなる→チョコレートを食べる→ラクになる』 そんなイメージが湧き、実際そうしてみると本当にラクになった。そう。単純に 本当の低血糖症状にチョコの糖が効いていただけなのだけど。

次第に 低血糖症状が頻繁化・重症化していく際 いつも頭痛を伴っていたため、「チョコレートを食べるとラクになる」というイメージが他の症状にも電波していったように思う。

 

文字が認識できない

夕方のしびれが常態化した後、時折 起きるようになった症状が、「文字が文字として認識できない」という症状。やはり17時頃。PCで文書を作成していると、突然画面が文字化けしたように見える。日本語の文書を打っていたはずが、突如 文字化け記号の羅列に変化する。アイコンなどはいつも通り。文字だけがおかしいのだ。仕方ないので 再起動をかけ、コーヒーを飲んだりチョコレートを食べながらPCの復活を待っていた。

あるとき、「また文字化け!」という 私のPCを覗いた同僚が「文字化けしてないよ?」と言ってきた。彼女が 文字化けで読めないはずの文章を読み上げる。驚いた。「疲れてるんだよ、甘いものでも食べて」と諭されたが、内心怖かった。自分には、「文字化け」にしか見えないのだ。チョコレートを食べて少しすると、"文字化け"は普通の文字に直っている。「疲れ?」と思いつつも、さすがに脳の異常を疑った。不安で 脳神経外科に電話してみたところ、「症状がでている時に診察を」という。そのタイミングをつかまえて医者にいくなんて、結構 長期戦になりそう…と半ば受診を諦めるような気持ちでいた。

 

何を言っているのかわからない

しびれ、頭痛、文字が認識できない、という症状が度々起きるようになった頃、続けて「相手の話が全くわからない」という現象が起きるようになった。お客さんを前にしている商談時は、なぜかしびれや頭痛の前兆なく 突然起きた。

序盤は 普通に会話をしているが、30分もすると 知らない国のラジオを流し聞きしているような感覚になる。相手が何を言っているのか さっぱりわからない。目の前にいるのに、画面を通じて知らない国の言葉を話す人を見ているよう。

「どうしよう、まずい。何を言ってるのか全然わからない。」感情だけは生きていて、思考回路が寸断されたような感覚。折を見て中座し、一拍置きに 陰に行く。頭も痛い。チョコでも食べて落ち着こう。そうこうしているうちに 元に戻り、何でもなかったかのように商談は続けられるのだが、次第に 1時間がタイムリミット と自覚するようになっていく。もう無理だ、脳神経外科に行くしかないと思うが、なかなか決断できないまま 時間が過ぎていった。

 

パニック

パニックは、二度あった。
しびれ、頭痛に続いて脂汗が出て、心臓がバクバクし始める。うまく息ができない。思考が停止し始め、今何をしていたのか、どこにいるのかわからなくなり、パニックに陥る。グワングワンという音が耳の奥で聞こえる気がして、フラフラ、グラグラする。自分が非常事態にあることは自覚していて、「どうしよう、どうしよう…」という感情だけが残され、意識が遠のいていく。

一度めのパニックは、ずいぶん前。昼食をとり損ね、そのまま会議にでたら思いがけず長丁場。頭痛がひどくなり、話も頭に入ってこない。脂汗が出て心臓がバクバクし、頭が混乱する。「これはやばい」と思うが、自分で『会議室から出る』という判断ができない。誰かが通風しようとドアを開けたのを機に部屋から飛び出し、無意識にチョコをいくつも食べた。気づけば何事もなかったかのように症状が消えていた。
二度めは 色々な症状の因果関係を感じ始めていた頃。疲れて帰宅した直後に起こった。救急車を呼びたいがどうすれば救急車がくるのか思いつかない。横になってみたものの部屋中が回り意識が遠のいていく。なぜか何かを摂取しなければいけない気がして 目についた栄養ドリンクを飲んだ。すると みるみる症状が消えた。何だったんだろう、と不思議でならない。でも、この一件で、「絶対におかしい」と自覚し、病院行きを決意した。

 

さまざまな症状が重なると。。

しびれに始まり、頭痛や 、息切れ、知覚認識の異常や発語の異常、パニック、いろいろなことが起きるが、最初は しびれや頭痛が ちょこちょこ出てくる程度。そのうち、動悸や息切れ、読めない、話がわからない、言葉が出ない、パニックや意識を失うなどの症状も現れるのだが、それぞれ単発で現れることもあるし 何かを口にしていれば回復するので、こうした症状に関連性があるとには気づきにくい。

しびれが気になる時期は 神経の関係や皮膚の過敏症を疑うし、頭痛やちょっとした意識朦朧は 水分不足を疑う。文字が認識出来ない時には脳の異常を、動悸や息切れが頻発すれば 内臓疾患や過労によるストレス、パニックが起きると精神疾患を疑う。それぞれ別の症状と捉えているので、該当しそうな診療科に行っても そのほかの症状について言及することはないだろう。つまり、どの症状をピックアップするかによって診断は変わり、なかなか「インスリノーマ」にはたどり着かないのだ。

私の場合、症状が重症化するまで(二度目のパニックが起きるまで)病院に行かなかった。症状それぞれが何科に該当するかわからないし、気づけば何事もなかったかのように元に戻っているので たまたま調子が悪かった・疲れがでた ということにして放置していたのだ。ただ、これが功を奏した面もあったりする。
血糖値の低いことが常態化すると、次第に慣れ、ある程度そのまま生活できるようになってしまうが、ある時点で限界を超え、いろいろな症状が続けざまに出てくる。しびれ、息切れ、知覚認識の異常などが連続して現れる。そうすれば必然的に"一連のもの"として捉えるようになる。症状が気になりだしてからは、「17:30 頭痛→フラつき、19:30 動機・錯乱」などと 時間と経過をメモするようになった。気づけば消えている症状ゆえ、書き残しておかないと いざ医者に行っても説明できないと思ったのだ。