食としつらい、ときどき茶の湯

ふつうの暮らしをちょっとよく。背伸びしないで今日からできる、美味しくて心地よい暮らしのヒントを集めています。

家をつくろうとする方・つくられた方の傍で、 家 人 暮らしを永年見守り続けた 元・建築設計事務所 広報担当から
日々の暮らしを見つめるヒントをお届け。家の捉え方、 暮らしの向き合い方を見つけるきっかけになれば嬉しいです。

素敵な家に 素敵な暮らしが付いてくるわけじゃない

竣工したての現場にて。建物はもちろん外構など敷地全体が調い、醸し出す雰囲気も素敵。お施主さまがお住まいになるまであとわずか。

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長年、設計事務所で 沢山のお客さまに接してきて思うのは、どんな方もその後の すてきな暮らしを思い描いて家をつくるということ。性能や仕上げに視点の向く方もいるけれど、それもご自分の望む暮らしがあればこそ。依頼先や完成する家は違えど、心の中で思い描いているのは「新居で始まる素敵な暮らし」。家というより、そこで始まる新しい暮らしに想像を膨らませているのです。

ところが実際、「素敵な新居 → 素敵な暮らし」とはいかない。手取り足取りプロの指南を受けて理想の家をつくっても、そこから先、暮らす場面にプロはついてこないのです。まさに 生かすも殺すも…の世界。新しくてピカピカのキレイな"ハコ"を渡されたら、そこから先は家族で操縦。何がどうだと素敵なのかわからないまま船を漕ぎ出し、まぁとりあえず…なんて言っているうちに新しくてピカピカの"ハコ"にはモノが溢れ、以前と変わらない雑多な日常が当たり前になっていく。「なんでこうなっちゃったの?」とため息をついている人も多いかもしれません。

繰り返しになりますが、「いい家ができればいい暮らしが付いてくる」わけではありません。そこにはやっぱりそれなりの感性が必要だと思うのです。自力で道筋が見えなそうなら、 家づくり同様 指南を受けるのも大事と思うのです。

早くていい、便利でいい、安くていい、多くていい、を基準に判断されてきた戦後日本の”当たり前”にどっぷり浸かり、知らないうちに育ってしまった感性を少しずつ軌道修正できたなら、「素敵な家で 素敵な暮らし」が叶うだろうし、なにも 新しい家でなくても素敵な暮らしは叶うはず。

一歩ずつ、一歩ずつ。